10月23日(木) 隠岐郡海士町長 山内 道雄氏の講演内容
平成26年10月23日(木)鳥取県・島根経済同友会合同視察研修会は隠岐島に出向いたところですが、その中で、隠岐郡海士町長 山内道雄氏の記念講演では、「離島からの挑戦(最後尾から最先端へ)」と題してお話を伺いました。
海士町は人口1,200人程度、離島振興法によってインフラ整備がなされてきたが、厳しい財政状況にあります。近年は「隠岐牛」のブランド化やCAS凍結システム導入による海産物の鮮度向上など様々な産業振興の取り組みが行われており、雇用創出や定住者の増加などの効果を挙げているところです。
これらの取組は、山内町長がリーダーシップを発揮して行われたものであり、全国的にも評価されています。最近では、メディアに取り上げられることが多くなって、海士町の隠岐島前高校の高校生やI-ターンの若者たちがテレビでその活躍ぶりが紹介されています。
地方創生のヒントが海士町にあると考えられています。
お話の内容はかいつまんで、以下のような内容でした。
(1)隠岐の島は「地下水」であり、非常に水質がよい。
「米」と「塩」が主要な産品となっている。
(2)小泉政権時代の三位一体改革、合併しない選択をした。
*夕張化を避けるため、行政は株式会社化、住民はその株主であるという理念で
海士町の経営再建、自立へと挑戦した。
*行政改革では、年功序列の廃止、人事評価制度の導入を図る。
課長クラスの底上げもやった。
*賃金カット 町長30%
職員15%
*役場は倒産しないというのは神話である。
身を削らない改革は無い。「未来への覚悟」が必要。
(3)合併しなかったことによって、台所事情が悪化した。
職員の意識が「住民」の意識も変えた。
合併しないことによって逆にモチベーションが向上した。
「トップが変われば職員も変わる。職員が変われば住民も変わる。」
危機意識を持つことが重要
(4)第1次産業の再生(ものづくりに取り組む)
*さざえカレーの開発(地産地消からはじめる。)
*ブランド化へ——-東京へ売り込み開始
生産設備(初期投資)に5億円投資(一般会計50億円中、5億円も使うとはという批判)
*売り上げは年2億5~6千万円
*50万個のサザエに加え、イカを加える。
*卸など流通業界を通すと手数料が多い。5つの手数料のうち4つを抜く。
*大手の業界と直接取引———明治屋、キクノヤなど、もも太郎(鮨屋)とも時下取引
(5)「隠岐牛」のブランド化の推進
田中社長———建設業から肉用牛の飼育に着手⇒松阪に負けない気概でやる。
*東京への出荷は「太田市場」ではなく、「品川市場」へ
枝肉チャンピオンになる。 MAX 4,450円/kg
(6)東京の市場で喜ばれる産物を送る。
市場開拓のポイントはI-ターンの知恵者を使うこと。
海洋センター研究所、岩ガキなど
いいものを生産して東京市場に出すこと。
攻めの姿勢を貫いて、改革につながった。
(7)ものづくりの原点は、「人づくり」にある。
「島まるごと図書館」———中央公民館+船の発着場+地元
*横浜で開催の「全国図書館大会」で表彰される。
「智産智消」——–3学年で77名しかいなかった高校が157名に増加
内40%が県外からのきた高校生
「ベネッセ」の京大・阪大卒の先生を招く。
(8)10月から「地方創生委員会」を立ち上げる。
子供たちの将来を考える。——–子供たちが夢を語り、地元で「島づくり」をする。
「ふるさと」賛歌——「志を果たして」ではなく「志を果たしに」島に帰る。
グローバルから「グローカル」の時代に
(9)Iーターン者の活躍ぶり
「島に仕事を作りに来た。」I-ターン—–島の閉鎖性を打破する。
ネット社会——-ネットによって島の年齢構成がよくなった。
イオンやサントリーなど研修や体験学習のために島に来る。
転入超過率 80数%
(10)「バカ者」の活躍
「バカ者」とは——–「常識を打ち破る人のこと」、閉鎖性の打破、変化と成長を促す。
制度がない。金がない。では駄目。禁句である。本気でI-ターン者を支援する。
(11)岩ガキ作業所、ナマコの輸出
3人でスタート、7000万円投資—–現在20人雇用
ナマコ——シンガポールへ7500万円輸出
(12)定住から永住へ
海士町らしい「おもてなし」—-気配り、声掛け
交流が地域振興を伸ばす。
*1 山内町長さんのお話は時間オーバーの熱演でした。非常に話題が多く、取りまとめることができません
でしたが、掻い摘んでお話の内容メモを書きました。今後もご活躍いただきたくご祈念いたします。
*2 詳しくは、2007年6月 生活人新書発行 「離島発 生き残るための10の戦略」(山内道雄著)
をお読みになれば山内町長の今回のお話内容が書かれています。